全国の地方自治体で、
唯一無二のコラボ戦略。
時は2013年。全国の地方自治体が情報発信にしのぎを削る中、佐賀県もその存在感や魅力を県外に発信する方法を模索していた。苦悩の末に辿り着いたのが「コラボレーション」。当時はゆるキャラによるプロモーション、YouTubeでの動画配信、都心へのアンテナショップ出店といった施策が主流だった中、あえてコラボという独自の戦略を打ち出したのはなぜなのか。「圧倒的な情報過多の中で埋没しないためには、全国でも突き抜けるものを発信しなくてはいけない。そこで人気コンテンツや企業とのコラボという手法によって戦略的に情報発信を行うことにしたんです。佐賀県単独で情報発信をしても、リーチするのは佐賀出身者や地方に興味がある一部の人に限られますからね」と話すのは当時プロジェクトリーダーを務めた金子課長。こうした経緯で佐賀県の情報発信プロジェクト「サガプライズ!」が発足した。しかし、肝心のコラボ先がなかなか見つからない。1年間で100件ほどの企業や団体に交渉を行ったが、ほとんどが門前払い。中には、佐賀県と滋賀県を混同されることさえあったと言う。それでも積極的に営業活動を続けた結果「面白そうですね!」と名乗りを上げたのが、大手出版社の「宝島社」。こうして佐賀県初となるコラボプロジェクトが本格始動した。
宝島社にスクウェア・エニックス。序盤からコラボの力を実感。
記念すべき第一弾は、宝島社とのコラボ。女性ファッション誌内で、佐賀県産の日本酒のパッケージや嬉野茶の商品パッケージを開発し、女性受けするデザインにしたところ好評を博した。さらに、東京・有楽町で嬉野温泉の足湯イベントを開催するなど、編集者の発想力によって効果的な情報発信に繋げることができたと金子課長は話す。「女性誌の制作者ならではのクリエイティブな視点で、佐賀県の魅力を上手に編集することができた。自分たちにとっても発見の日々でしたね」。その後、大手ゲーム会社「スクウェア・エニックス」が誇る大人気ゲーム『サ・ガ』シリーズとのコラボを企画。プロジェクト名は、シリーズの一つ『ロマンシング サ・ガ』を模し、その名も「ロマンシング佐賀」。『サガ』シリーズの魅力と佐賀県の県産品や伝統工芸の魅力を味わえるイベントを東京・六本木で開催し、ゲームファンを中心に7000人を動員。テレビやインターネットの各メディアで大きな話題になった。「ゲームファンはインターネットとの親和性及びSNSでの情報拡散力が高く、そのファンの声を拾うことで、自分達の企画が世の中で話題となっていることを実感できた。この頃から「佐賀県といえばコラボ」というイメージが認知され出し、確かな手応えを感じました」と田中係長は当時を振り返る。
わずか8年間足らずで、
30回ものコラボを達成。
その後も「サガプライズ!」では、年に3〜4回ものコラボを達成。2015年には「任天堂」の対戦アクションゲーム『Splatoon(スプラトゥーン)』と共に「Sagakeen(サガケーン)」を企画。佐賀県が誇るイカの名産地・呼子エリアを中心に「Sagakeen 呼子のイカすフェス」を開催し、公式ショップでコラボグッズの販売なども行った。2018年には、シリーズ30周年を迎えた「カプコン」の人気格闘ゲーム『ストリートファイターII』とのコラボ企画「ストリートファイター佐賀」を発表。人気キャラクターのサガットによるコラボ名産品ショップ「佐賀ット商店」を東京でオープンし、主要キャラクター達が描かれた有田焼なども販売して大きな反響を呼んだ。他にも『おそ松さん』や『ポケットモンスター』など、名だたるアニメなどとコラボを行い、その数はのべ30を突破。順調に実績を重ねていくも、岩本副主査はコラボレーションの難しさを口にする。「ただコラボをすれば良いわけでなく、なぜ佐賀県がこことコラボをするのか、ファンの方も納得できる理由を毎回考えるのが大変です(笑)」苦労を語る一方で、着実にコラボ数を増やしてノウハウも蓄積されているそうだ。
自由な環境だからこそ、
大胆なコラボが生まれる。
今でこそ地方自治体と企業のコラボレーションは当たり前になったものの、当時の県の取組としては日本初であったと言える。他県からの取材も相次ぎ「サガプライズ!」は全国から大きな注目を集めた。その理由の一つは、プロジェクトに関わる職員一人ひとりのモチベーションの高さにあると金子課長は話す。「若い職員のアイデアを積極的に採用し、彼らにある程度の権限を与えているので皆やる気に満ちています。そういった風通しの良い自由な空気も、佐賀県庁ならではの特長ですね」。それに肯く宮﨑主査も「企画や進行など、周りに相談はしつつも自分で川上から川下まで全部設計できる。任せてくれることは任せてくれて、鋭い指摘はきちんとしてくれる。だから、日々の仕事がすごく充実しています。これ以上に自由な部署、多分ない(笑)」と楽しそうに語る。「一つひとつのコラボに対する県内外のダイレクトな反応がモチベーションになっています」と永尾副主査。今後は、今まで積み上げてきた実績を活かしながら、時代の変化に合わせたコラボを模索していくと言う。次はどんなコラボレーションを生み出すのか、「サガプライズ!」から今後ますます目が離せない。
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