#9

佐賀らしい、やさしさのカタチを追い求めて。

#9

佐賀らしい、やさしさのカタチを追い求めて。

佐賀県には、年齢、性別、国籍、障害の有無など、いろんな個性があり、いろんな想いを持った80万人の県民が暮らしている。県民一人一人が自分らしく輝ける社会の実現に向けて、佐賀県では、みんなが自然に支え合い心地よく過ごせる、佐賀らしいやさしさのカタチ「さがすたいる」を広めるプロジェクトを進めている。自治体として類を見ない取組はどのようにして始まったのか。担当チームに話を聞いた。

Member

安冨 喬博

2005年入庁

流通・貿易課
企画主幹
行政職

諸江 哲智

2001年入庁

県民協働課
副課長
行政職

山田 由美

2009年入庁

県民協働課
主任主査
行政職

※掲載されている情報は取材当時のものとなります。
※記事中の写真は一部イメージです

ハードだけでなく、ハートをカタチに。唯一無二の「さがすたいる」プロジェクト発足。

バリアフリーやユニバーサルデザインの必要性が認識されて久しい。佐賀県では、独自の取り組みとして、施設の整備を進めていくだけでなく、障がいのある方やお年寄り、子育て・妊娠中の方、外国人の方(以下、「当事者」という。)など、みんなが自然と支え合い心地よく過ごせるようなサポートを広めていくため「さがすたいる」プロジェクトを発足。「自分自身が、身近に障がいのある方がいるわけでもないし、独身で子供もいない。親も元気で、当事者の皆さんが何を求めているのかイメージできなかった。それなら当事者の方にヒアリングしてみようと、半年間ぐらい話を聞いて回りました。その中で、外とのかかわりに不安を感じていらっしゃる方が多い印象があった一方、ソフト面からサポートできることが意外とあると気づきました。そこで、この気づきを県民みんなが共有できる仕組みを創り、当事者と外の世界をつなぐ役割を行政が担いたいと考えたのが『さがすたいる』のはじまりです。」と企画を立ち上げた安冨氏は当時の状況を振り返る。「プロジェクトの立ち上げにあたって、当事者に寄り添いすぎないことも意識しました。私のように日常生活で当事者と接する機会のない人には、どういうサポートが必要なのか分かりませんし、当事者を意識することが少ない。なので、当事者側も困っていることがあれば声を出してほしいし、こちらの気持ちも理解してほしい。一方通行の想いは押し付けになってしまう恐れがあるので、あくまでお互いが理解し合うために必要だからやるという姿勢は貫きたかった。」とも安冨氏は言う。

あるものだけでなく、ないものにも着目した情報サイト。

「さがすたいる」の根幹となるウェブサイトには、想いに賛同したお店がさがすたいる倶楽部として掲載されており、当事者は設備やサポートをジャンル別に検索できる。その数は約6年で約1200店舗に達した。ウェブサイトを立ち上げた狙いを「当事者が何に不安を感じていて、お店にどういうサポートを望んでいるのか、お互いが認識し合えると思ったから」と安冨氏は語る。「例えば、目が不自由な方が飲食店に行ったとしますよね。『メニューを読み上げるだけではなく、料理の特徴を教えてほしい』『お水をテーブルに置くときに音を鳴らしてほしい』など、こういう望みって、教えてもらえさえすれば特別なスキルが無くても実践できるじゃないですか。そういった気づきを増やしたかったんです。」お店情報は県民代表のリポーターが解説していく。リポーターは、障がいのある方や子育て中の方、地域の学生などで、お店の設備やサポートのうれしいポイントをレビューとして発信する。お出かけの後押しをするのは、同じような境遇の方の口コミということを理解しているからこそ、この仕組みを取り入れている。ユニークなのは、施設にあるものも、ないものも、すべて紹介している点だ。「これも当事者への取材から分かったことで、ないものの情報もほしい!という意見を頂いたんです。ないことが分かっていれば介助者の人と一緒に行けばいいとか、トイレが使えないのであればトイレを済ませてから行けばいいとか、事前に判断できるからとのことでした。」と安冨氏。バリアフリー情報の掲載は、あるものに終始しがちだ。ないことを伝えていくのは、施設側への減点評価につながると思うかもしれないが、訪問する側もないことを前提に準備できるので、情報として有益なものとなる。その情報を起点に、お互いが思いやりの発想をもつ。その仕組みをデザインすることこそ、”佐賀らしい、やさしさのカタチ”なのかもしれない。

「さがすたいる」の想いへの共感者が増えていく仕組みとは。

「さがすたいる」の認知度は確実に増えている。そのわけは絶妙なコミュニケーション設計にあった。「さがすたいる」の想いを広めていくため、ウェブ等での情報発信だけでなく、学校や店舗に出向いて当事者が想いを伝える出前研修や、リアルな交流イベントも企画している。興味関心がある層向けには、「レッツさがすたいるトーク」と題した、全国で先進的な活動を行っている方等のトークセッションと交流会を実施。想いを同じくする方同士での対話を図ることで、彼らが地域で「さがすたいる」を広める活動の支援に繋がればと考えている。また、まだ知らない層向けには、まずは「さがすたいる」を知ってもらい、みんなが一緒に楽しめて自然にまざり合う交流イベントとして「さがすたいるフェス」を開催。年齢・性別・国籍・障がいの有無などに関係なく、様々な方がまざり合い、笑顔があふれる時間となったという。「実際に会って話をしたり、行動を共にした経験がお互いの心の距離を近づけます。心の距離が近いことで、相手の気持ちに寄り添い、自分にできることを考え、それによって行動が変わる。ハードとハート両方のやさしさが広がっていくことには、こうしたコミュニケーションの機会を増やすことが大切だと感じています。」と、山田氏。「さがすたいる」らしい視点を持った企画は年々共感を呼び、佐賀らしいやさしさを一緒に広めていくうねりとなっている。

「さがすたいる」の想いを全国へ

「さがすたいる」に代表されるような前例のないユニークな施策を各領域で展開できるのは「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」という佐賀県の基本理念が職員一人一人に浸透していることにあるのかもしれない。「人を大切にすること。それが世界基準で誇らしいもの。そういう社会をみんなで創っていくというのが佐賀県のミッションなんですね。ミッションを実現していく一つのアプローチ方法が『さがすたいる』なのかなと思います」と諸江副課長。2024年はSAGA2024と題して、国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会(国民体育大会が2024年から名称変更)が開催される。全国からたくさんの人が佐賀を訪れるなかで、「さがすたいる」にますます注目が集まり、”佐賀らしい、やさしさのカタチ”が全国、そして世界へ広まっていく日が来るのもそう遠くないかもしれない。

他のプロジェクトを見る

#8

大隈重信侯の知られざる功績を、佐賀から全国に向けて発信する。

#7

DX×スタートアップ支援で、佐賀のビジネスをアップデートする。

#6

佐賀から世界へ。新たなスポーツシーンを切り拓く。

#5

ここで子育てがしたい!と、
誰もが思える県を目指して。

#4

オンライン教育で、佐賀の未来を創造する。

#3

未曾有のコロナ危機から、全ての佐賀県民を守り抜く。

#2

いちご農家を救え!20年ぶりの新品種開発への挑戦。

#1

コラボレーションで、佐賀の魅力を全国へ。