未知の土地で見つけた、眠れる文化財の輝き
佐賀県は私にとって、もともと縁もゆかりもない土地でした。しかし、地域に根付いて、その地域の文化財に携わる仕事がしたいと考え始めた矢先、佐賀県の文化財保護主事の募集を見つけました。採用試験の勉強を通して吉野ヶ里遺跡や名護屋城跡の圧倒的な存在感に触れ、さらにその背後にまだまだ多くのポテンシャルを秘めた文化財が眠っていることに気づかされました。大学で学んだ考古学の知識が、行政という枠組みの中で本当に活かせるのかという不安もありましたが、それ以上に「この眠っている歴史の断片を、自分の手で掘り起こし、活用したい」という知的好奇心が勝りました。自身の考古学への想いを再認識したことが、縁のない土地へと飛び込む大きな決断の決め手となったのです。

出土品の声を聞き、
歴史の輪郭を描き出す
現在の私の仕事は、佐賀の文化財を守り、伝えること。日々、実際に出土したばかりの遺物とに直接触れる機会が多くあります。土の中から現れた「モノ」は、何千年も前の人々の暮らしを静かに物語っています。それら一点一点と対話し、声なき声を聞き取ることで、その遺物がどのような性格を持ち、当時の社会でどんな役割を果たしていたのかを明らかにしていきます。発掘調査の現場では常に予測できない場面に遭遇しますが、これまでの蓄積してきた知識と経験を頼りに、歴史のパズルを適切に解き明かしていくプロセスを大切にしています。

学びがつながる喜びと、
県民に届ける「価値」
考古学という分野は、歴史だけでなく地質や環境、民俗など、あらゆる分野と密接に関わりながら研究対象や視点の幅を広げていくため、常に新しい学びへの意欲を刺激されます。そうして得た知識をもとに、文化財の新たな価値を見出し、守り、後世に伝えること。そして、展示や講演会を通してその魅力を県民の方々へ伝えていくことが、この仕事の最大の醍醐味です。現場で遺跡や遺物の説明をした際、県民の方に「よく分かった」と理解を深めていただき、感謝の言葉をかけられた時の喜びは、何物にも代えがたいものがあります。

専門性が混ざり合う、
開かれた探求の場
「文化財行政」という言葉にはどこか堅いイメージがありましたが、佐賀県庁に入庁して見えてきたのは、実に多様な時代や分野の専門家が集まり、それぞれの知識を生かして連携する、開かれた組織の姿でした。自分の専門分野という強みを最大限に活かしながら、異なる視点を持つ仲間と切磋琢磨して事業を進めていく。この環境は、一人の研究者としても非常に面白く、やりがいに満ちています。行政の力で歴史を「守る」だけでなく、現代の価値として「活かす」ことで、佐賀の魅力を更に掘り起こしていける。そんな確信を持って日々の業務に取り組んでいます。








