陶磁器を学び
陶磁器の本場へ。
子供のころからものづくりが好きで、大学では陶磁器を学びたいと思い、セラミックデザインコースがあるところへ進みました。入学してからは陶磁器製品をひたすら自分でデザインして手作業で型作り・鋳込み作業・焼成などを行い、本当にたくさん制作しました。手を動かしてものづくりの感覚を養えたのはよかったと思います。就職を考えた際に、特定のメーカーではなく、陶磁器に広く関わるほうが自分に向いているかもと考えていたところ、幸運なことに佐賀県の窯業職員の募集を発見しました。
デザインの力で、
佐賀の陶磁器産業を支援する。
窯業技術センターのお仕事としては陶磁器に関する研究・技術開発、業界支援などです。私はデザイン部に所属しているので、陶磁器のデザインや設計、加飾技術など、ものづくりの出口に近いところの内容について、研究・支援を行っています。いま取り組んでいる業務内容としては、和絵具の活用のための印刷・転写技術に関する研究や、令和4年度に開発した「iroe」アプリの運用、また、3DCADソフトでの製品設計から型切削・3Dプリンター出力等のデジタル技術を利用した対応、その他、商品開発支援なども手掛けています。
伝統に敬意を払いながら、
信念に基づいたチャレンジを。
陶磁器産業を発展させるため、伝統に敬意を払いながらも、新たな挑戦をしていけるのはこの仕事の大きな魅力だと思います。例えば、有田焼など肥前地区の磁器に使用されている絵具の色見本を搭載し、さらにその色を使って絵付けやデザインをプロトタイピングできるツール系アプリ「iroe」を開発したときのこと。「アプリの開発」という取り組み自体、窯業技術センターでは前例が存在せず、私にとっても未知の領域でした。いいものができるのか、産地内の事業者に受け入れてもらえるのかなど、内心不安だらけでしたが、何か新しいことが生まれるはずだ!という信念のもと、周囲の理解者の協力を得て、事業を推進しました。結果、リリースされたアプリは評判も上々で、多くの方に利用していただき、今後のさらなる活用計画も現在進めているところです。前例にとらわれず行動する大切さを学んだプロジェクトでした。
文化が残っているからこそ
佐賀にしかできない進化ができる。
私は関西の出身で「こんな最果てによく来たね」と言われることがあります。でも、そうは思いません。佐賀は先人たちの築き上げた文化や技術が継承されているすばらしい場所だと思います。伝統は残っているからこそ、現在の生活文脈や優れたテクノロジーなどと結びつけて、独自進化させられるはずで、逆にこれは佐賀にしかできないことだと考えています。課題があるから、可能性は生まれるわけです。微力ながら、研究開発を通して、ものづくりに関わりたいと思う人がたくさん集まるような魅力的な地域づくりや産業の発展に貢献していきたいと考えています。