薬剤師×行政の可能性を感じ、佐賀県庁へ。
薬剤師は病院や薬局で働いているイメージがありますが、行政の薬剤師はさらに幅広い業務に携わることができます。私が佐賀県庁を選んだ理由は、定期的な異動によってさまざまな業務に挑戦できることに魅力を感じたからです。福岡県出身ですが、佐賀県に近い小郡市で育ち、子どもの頃からバルーンフェスタや吉野ヶ里遺跡公園など佐賀県には親しみがありました。大学での実習中に、薬局では限られた医薬品しか扱えないと感じ、もっと薬剤師の資格を色々な側面で活かしたいと考えました。行政の薬剤師は医薬品の製造段階を監視することで高品質で安心安全な医薬品を保証する役割があり、この点に強く共感したのです。また、佐賀県は県立病院を持たないため、薬剤師の仕事が行政業務に特化している点も、私には合っていました。

知られざる薬の県・佐賀での業務内容とは。
現在は大きく分けて薬務と温泉の二つの業務を担当しています。薬務では医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器等の製造業や製造販売業の許認可業務、監視指導を行っています。特にGMP調査では医薬品製造業者が守るべき基準の監視指導を担当し、製造現場に入って承認された方法で製造されているか等を確認しています。また温泉業務では、温泉を掘削したり、利用したりする業者への許可業務も行っています。佐賀県は意外と知られていませんが、医薬品で発展してきた歴史があり、特に貼付剤や目薬が有名です。「配置薬」と呼ばれる使った分だけ支払うシステムは富山県、奈良県、滋賀県と共に佐賀県の地場産業として根付いています。

薬局で働いていたら経験
できなかった大切なこと。
薬剤師の専門性を活かしながら、ジョブローテーションでさまざまな部署で経験を積めることに大きなやりがいを感じています。特に現在の業務では、県内業者への指導が実を結び、県民の健康に直結する医薬品がドラッグストアなどに並んでいるのを見ると達成感を感じます。医薬品の承認審査から製造、市場流通までの過程に関われるのは行政ならではの醍醐味です。とある湿布薬など広く知られている製品にも携わっており、製薬会社の申請を確認する役割を担当しています。この業務は規制行政の一面もあり、業者と県民の間に立って薬の安全を確保する重要な役割です。目に見える成果が出にくい仕事ですが、県民の健康を守るという使命感を持って取り組んでいます。

総合的な視点で佐賀の薬事行政に貢献していきたい。
今後は検査業務に携わってみたいと考えています。医薬品は適切に製造され、かつ、最終的に試験に合格したものが市場へ出荷されます。試験方法は多岐にわたり、大学で学んだ知識だけでは不十分なので、佐賀県衛生薬業センターで検査業務を経験すれば、業者へのアドバイスもより的確にできるようになると考えています。また、保健福祉事務所勤務の経験から、行政職の方や保健師、栄養士、獣医師など多様な専門職と協働することの価値を実感しました。現在の薬務課は薬剤師が多いですが、多職種連携を通じて視野を広げ、より総合的な視点で薬事行政に貢献していきたいと思います。
